現代美術論@桜美林大学、2018年度

桜美林大学芸術文化学群で1年間、現代美術論A/Bの講義を担当しました。

初めての大学での非常勤が桜美林というのは感慨深いことでした。

というのも私は横浜線沿線の出身で、N研町田校に毎週日曜日通っていたので、乗り換えで朝の町田の空気を吸うだけで泣けるくらい懐かしかったのと、

桜美林の附属中に進学した友人もいたので、あの制服を見るとこれがエモなの??という気分に包まれるからです。

講義は前期と後期で履修が分かれていて、通年のものではありませんでした。

なので毛色を完全に変えて講義を組み立てていくことにしました。

【前期】

前期の講義のテーマは、現代芸術のオーソドックスな歴史を押さえること。そしてその流れのなかで、美学の話題にも親しむこと。

組み立てとしてはだいたい、2回具体的な芸術家や作品について学んだら、1回はそれに関連する美学の話題を取り上げる、という3回セットを繰り返していく感じにしました。

***

第1回  イントロダクション
第2回   芸術の媒体1:クレメント・グリーンバーグと抽象表現主義
第3回   芸術の媒体2:マイケル・フリードとミニマル・アート
第4回     ジャンルとはどのように規定されるのか:ジャンルと批評
第5回     ポップアート1:イギリスでの展開
第6回   ポップアート2:アメリカでの展開
第7回   だれの作品なのか:手法としてのアプロプリエーション
第8回  コンセプチュアルアート: マルセル・デュシャンをきっかけとして
第9回  パフォーマンスアート:ハプニング、イヴェント、フルクサス
第10回  環境アート:アースワークとその後の展開
第11回  なにが芸術なのか:芸術の定義
第12回  リレーショナルアート1:「関係性の美学」をめぐる論争
第13回  リレーショナルアート2:「関係性の美学」と地域芸術祭
第14回  芸術はどんな価値を持つのか1:芸術的価値
第15回  芸術はどんな価値を持つのか2:芸術的価値

***

反省点がいくつか。

・自分も学生もヒーヒー言う半期になってしまった

まあ1年目あるあると思いますが、とにかく自分の授業準備が大変になってしまった。毎日ほとんどこれにかかりっきりで、講義当日の朝まで講義の資料を作っていた。完全に仕事の管理ができないダメなパターン。まあそれでも自分にとってはヒーヒー言ったかいがあって、勉強になったしものすごいストックができたので良かったかもしれないです。でも、学生にとっては明らかに情報過多であったと思います。もちろん、せっかくの講義なのでたくさんのことを扱うのは大事な側面もありますが、そればっかりじゃダメよね、、、と反省。

・学生が疑問を持つ点に関して見積もりが甘かった

例えば、現代美術ってパッと見るとなんでもありで、正直好きなことやればなんでもいいんじゃないですか、と言う雰囲気がある。これに対して「好きなこと」と「美術史的に価値のあること」と、「ただ新しいこと」と「独創的であること」の違いなんかをちゃんと最初に解説するべきと思いました。講義が進むにつれ、リアクションペーパーに対する応答として小出しにこういうことを説明しましたが、イントロダクション回をもっとうまく使って半期かけて学ぶものの意義を伝えるべきだった。

・レポート課題がきつかった

というか、まずレポートの書き方について、講義中に大学ですでに習ったか?と聞いたらはい、と言われたのでじゃあもう講義中にレポートの書き方説明する時間ないしいいか、と思い、自分が出す課題に関しての評価ポイントは伝えたのですが、それ以前の基本的なことは端折ってしまいました。でも実際提出されたものを見ると、これも説明すべきだったと感じます。それから一応授業で学んだことを使って書けるレポートにしたつもりですが、特に美学的な課題に関しては、芸術はやっぱり自由なものだ、という感じの解答が多く、一個前の反省点と合わせて課題だな、と思いました。

【後期】

後期のテーマは、芸術とそうでないものの境界線の曖昧さを知ること。話題が多岐に渡ったものの、私としてはずっと深めたかったものとかを扱えたし、あと授業準備に自分なりの制限時間を設けるようにしたので前期より体感はかなり楽になりました。そしてリアクションペーパーをオンライン提出にしたので、管理が楽になり、ほとんどの人がその場で慌ただしいなか書くときよりも良い内容を書いてくださいました(ただし出席していたのに出しそびれる人の対応がちょっとめんどくさい)。講義では、具体的には以下のようなテーマを取り上げました。

***

第1回  イントロダクション
第2回  建築1:現代建築の概観
第3回  建築2:建築の有用性と、その芸術的価値をめぐる言説
第4回  デザイン1:現代デザインの概観
第5回  デザイン2:デザインと芸術の評価ポイントに関する類似点/相違点
第6回  写真1:現代写真の概観
第7回  写真2:写真と絵画の関係史
第8回  自然1: 現代のいけばな
第9回  自然2: 芸術と自然の関係史
第10回  アイドル1:アイドル史、アイドルアニメの概観
第11回  アイドル2:総合芸術としてのアイドル?
第12回  研究発表会のための準備講義
第13回 食事1:食事をめぐるアートの概観
第14回 食事2:食と地域おこしの触媒としてのアート
第15回 研究発表会

***

反省点をいくつか。

・意外にみんなグループ発表をしない

最終回に、受講生には自分の好きなものを取り上げて、そのジャンルの美的評価ポイントや芸術かどうかが曖昧な理由などを研究発表してもらいました。これ自体は、レポートよりも生き生きとした学生の姿が見られたのと、みなさんこちらの期待以上のレベルで面白かったです。ただ、シラバス書いた時点ではグループ発表を想定していたものの、まあ私もそうなのですがこういうのを人とやるのがむしろ億劫だから一人でやりたいという人もいるかなと思ったので、どっちでもいいよ〜〜として希望を聞いたらなんとまあ一人希望者の多いこと。結局研究発表は2週行いましたが、最終回はものすごい時間オーバーでした。次回はこっちでいくつかテーマ設定して、テーマベースでグループ分けするとかしたほうがいいかなと思いました。

・中心的問いの共有

数回すぎたあたりでハッとしましたが、個々のテーマに関してなぜそれが芸術かそうでないかの境界を揺るがすものなのかを説明する美学的テーマの共有が甘かった。テーマが雑多なぶん、これがより大事だったと思います。途中からかなり意図的に、明確に問いの共有を心がけましたが、これをイントロダクションの時点でシラバスに沿って概観できていたらまた違ったかなと思いました。

・パワポ力

色々なテーマを扱うのに際して、なんか例を集めては貼るだけのパワポを作り、大事な説明は板書で行なっていましたが、だいたい全容が見えたので来年はパワポにこれを盛り込みたい。でも自分にそんなにきれいなパワポを作る力が足りていないので、これは春休みに研究する。

とにかく、新米の私と1年間共に学んでくださった学生さんたちに感謝です。

来年度はとにかく、イントロダクションを大事にしてブラッシュアップした講義をしたいと思います。